どこでもGAME&WATCH ~ゲームウオッチ全機種紹介~

日本で発売された任天堂「ゲームウオッチ」をご紹介いたします

【第15作】 TL-28 タートルブリッジ

発売日 昭和57(1982)年2月1日
ワイドスクリーンシリーズ(後期)
本体色 ホワイト
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 6,000円
(中程度、本体のみ)

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☆ 不遇の名作シリーズが登場

 オクトパスで頂点を迎えたゲームウオッチ第2期黄金期も、クリスマス・お正月を過ぎて下火になってきました。
 ワイドスクリーンシリーズでは、オクトパスを除き、受け止め系のゲームが続くなど、マンネリ化してきたようです。
 携帯ゲームではエポック社からパクパクマンが発売され、これがヒットするなど、他社からもライバル機が登場し、任天堂ゲームウオッチは発売から2年を待たずに初の苦境とも言える冬の時代を迎えます。
 そのような状況で発売された、タートルブリッジ。オクトパス以来となる久しぶりの戦略ゲームであり、背景の美しさ、ブラック&ホワイトの斬新な本体、新しくチャンスタイムが導入されるなど、新機軸いっぱいで発売されたのですが…
 一度離れたユーザーの評価は厳しかったのです。タートルブリッジからのワイドスクリーン後期3部作はいずれも名作ながら不振に終わることになります。


☆ 斬新!浮いてるカメ→橋がわり

 さて、そんなタートルブリッジですが、これがまた大変面白い作品になっています。
 ストーリーは、探検隊が進んだ先には橋がなかったので、たまたま浮いていた亀の甲をピョンピョン飛んで、向こう岸にいる仲間に荷物を運ぶ、というものです。
 …あれ?何かに話が似ていませんか?
 そうです、因幡の白うさぎですね。あの話は隠岐島のうさぎがワニ(現在のサメ)を騙して向こう岸に渡るという話ですが、アイデアは似ています。
 タートルブリッジの魅力は何と言っても、亀のエサとなる魚が海底から出てきて、カメが潜るシーンに尽きます。そんな状況なのに、向こう岸にいるはずの仲間が顔を出してくれない時があり、その時間には荷物を渡せないのです。荷物は渡せないわ、カメは潜るわ…ポーター役の主人公はカメの上を行ったり来たり、たまに戻ったりしながら荷物を延々運び続けるのです。
 なお、GAME Bではすべてのカメが海に潜るのに対し、GAME Aでは真ん中のカメが海に潜りません。ただし、2分以上真ん中で休んでいると、魚が出てきて真ん中のカメも潜ると説明書に書いてあります。2分待つのがめんどくさくて試したことはありませんが。


☆ 途方もないハイスコア9999点

 この作品は得点パターンが
① 向こう岸の人に荷物を渡すと3点
② 荷物を渡した状態で左岸に戻ると、かかった時間に応じて2-12点
の2通りです。これまでの作品と比べると得点が多いように思いますが、なかなか得点が増えないんですよこれが。
 先にも少し述べましたが、本作以降のワイドスクリーンシリーズ後期から変更された点がいくつかあります。
 細かな変更点といえば、ACL・ALARMボタンを補強していた金属板が、細い棒などで押しやすいように凹凸をつけたことが挙げられます。本作以降の作品はすべてこの凹凸タイプの金属板になり、さらにゴールド以降の過去の作品についても本作以降に製造されたものはこの金属板に変更されました。
 また、見た目もこれまでの作品とは大きく異なりました。これについては次項『第16作 ID-29 ファイアアタック』で述べたいと思います。
 見た目以上に大きな変更となったのが、得点制度の変更です。これまで一部の作品を除いて最高得点が999点だったのですが、処女作ボール以来となる9999点となりました。
 この最高得点の大幅なアップに伴い、ミスクリア制度の増強と、ノーミス時のチャンスタイムが設定されました。
 ミスクリアは、百の位が2及び5の時にこれまでのミスがクリアになるように増強されました。また、ミスがない状態でミスクリアの値に達した場合、一定時間(20-40秒)魚が出なくなりカメが潜らなくなるチャンスタイムとなるのです。
 これらにより、得点がしやすくなったのですが、いかんせん最高得点が9999点… そこまで狙える時間はサラリーマンにはありません。
 エンドレスな絶望感がこのゲームの欠点かもしれません。ポーターがブクブク溺れている姿もお気の毒です。
 ちなみに、ゲームウオッチの生みの親、横井軍平氏(故人)は著書の中で、本作を名作と評価されています。


ゲームウオッチらしい細かい表現

 タートルブリッジは、見た目がこれまでの作品とは全く異なる斬新な本体色が特筆されます。ブラック仕上げのボディにシルバーの6本線が、過去にとらわれない新しいゲームウオッチを出そう!とした任天堂の意気込みを感じるのです。
 背景も、これまでの液晶前面だけでなく、液晶の後ろと反射板の間にもカラーフィルムを挟み、奥行きを感じる背景になりました。
 ただ、このフィルムの工夫のせいなのかどうかわかりませんが、本作タートルブリッジから 第18作 OP-51 オイルパニックあたりの液晶が特に弱く、液漏れがよく発生するのです。この4作に関しては、液晶のいい状態のものがあまり無いような気がします。
 他にも、なかなか素晴らしい表現がなされています。カメが首を動かしたり、潜って魚を追いかける姿は素晴らしいですね。主人公のポーターも溺れて苦しそうですが、なかなかいい顔しています。
 ちなみに、アラームキャラクターは海底のカニさんです。これは若干強引ながら、かわいいのでいいでしょう。


☆ 実物持ってないと味わえない

 前述の通り、ゲームウオッチ冬の時代だったこともあり、本作もあまり売れなかったようです。
 不人気だったこともあるのか、他のゲーム機にも復刻されていません。
 実物を手に入れなければタートルブリッジはプレイできないのですが、液晶の不具合を起こしている本体が多いのが辛いところです。
 私は、たまたま液晶がきれいな中古品と、液晶がダメになった新品をそれぞれ安価で手に入れましたので、液晶を交換して新品を1台作りました。いやー、新品を手に遊んだ時はうれしかったなぁ。 もちろん、新品であってもプレイしてこそゲーム。電池を入れてたまに遊ぶようにしています。
 分解は壊さない程度に自己責任で行ってください。液晶が薄くなったら偏光板の交換をしたり、ボタンが効かなくなったら基盤やボタンの掃除をしたり、自分でもメンテナンスができるようになるとなかなか便利です。分解に慣れれば、ゲームウオッチ集めが楽しくなりますよ。