どこでもGAME&WATCH ~ゲームウオッチ全機種紹介~

日本で発売された任天堂「ゲームウオッチ」をご紹介いたします

【第24作】 MW-56 マリオブラザーズ

発売日 昭和58(1983)年3月14日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 ワインレッド
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 5,000円
(中程度、本体のみ)

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任天堂看板兄弟『初』の主役タイトル

 今でこそ日本のブラザーズを代表する有名人、マリオ&ルイージですが、初登場したドンキーコングでは『救助マン』んて変な名前つけられるわ次に登場したドンジュニでは座ってるだけの悪役させられるわと散々な下積み時代を送っておられます。ちなみに前作ドンキー2では立ちっぱなしのアラームキャラという苦行を強いられていました。
 その甲斐あってか、今作でついに主役の座を勝ち取ったのでした。しかし、そんなデビュー作も決して華やかなものではなく、やっぱり苦行の連続なのでした。


☆ 見た目違和感ありありの左右マルチ

 苦行がどんなものなのかは次項でお話しするとして、まずはその見た目の特異性について。
 マルチスクリーンシリーズは、縦に開き上下に画面があるものが一般的でした。
 しかし、このマリオブラザーズだけは違います。何と、横開き左右画面なんです。これは、国内で発売されたマルチスクリーンシリーズでは唯一の横開き左右画面となりました(海外向け商品では本作の他に2作あります)。かなり違和感あります。
 コントローラーも、左右それぞれに縦1本ずつあるだけ。ミッキー&ドナルドで縦についた上下コントローラーと同じものです。右画面、左画面の兄弟をそれぞれ上下に動かすだけです。
 こんな見た目変なマリオデビュー作ですが、内容もビジネスマンの悲哀を醸し出すものなんです。

 

☆ 辛すぎる肉体労働、そしてパワハラ

 舞台はマリオ&ルイージが就職したビン詰め工場。ベルトコンベアにビンの箱を積み替える仕事が与えられています。
 工場では、空箱をマリオがコンベアに載せるところからスタートします。コンベアは上下5本もあり、下のコンベアに流れてきた箱を落とさないように上のコンベアに載せ替えます。左右画面の間を通るたびに空箱→ビン詰め→フタ→ラッピングがされていきます。最後はルイージがコンベアからトラックに載せ替えて、これが8箱揃うとトラックが発車し、めでたく出荷となります。
 箱を落とすとミスになるのですが、マリオ、ルイージそれぞれ鬼上司に、何しとんねんこのスカタンが!ていう剣幕でどやしつけられます。はっきり言ってパワハラやん。ゲームとはいえ、社会の厳しさとは何かを身をもって教えてくれた兄弟なのでした。

 

☆ 特に秀逸な表現、満点の操作性

 最高得点999点、ミスクリアは300点、ミスクリア時にミスが無ければチャンスタイムで得点2倍という、マルチ以降同じ得点制に落ち着いています。
 得点パターンは2つです。

① マリオ&ルイージが箱を移し替えると1点

ルイージがトラックに8箱移し替えてトラックが出荷するとボーナス10点

 得点パターンが単純で、ミスも移し漏らして箱を落とすパターンだけなので、ゲームとしては非常にわかりやすくなりました。
 操作も、右側の上下ボタンで右画面のマリオを、左側の上下ボタンで左画面のルイージを動かすだけです。箱を受け取る位置にいれば、兄弟が自分で箱を移し替えてくれます。さすがビジネスマン!働きますねぇ。
 操作性もいいですし、怒られるサラリーマンの悲哀や、出荷した後に一段落して休む2人の姿、トラックに6箱積んだ時点でトラックにエンジンかけてドライバーが待機しはじめるところまで、細かい表現が特に秀逸な一作だと思います。
 いやー、兄弟のデビュー作がこんなに名作だなんて。売れなかったけど。

 

☆ ポッカ?何それレモン??

 この日本向け唯一の横マルチ、売れなかったんです。ドンキー2よりはるかに面白いのに(個人の感想です)。
 その割には売れると見越して作り過ぎたパターンは、ドンジュニと同じ轍を踏んでいます。
 作り過ぎたマリオは、何と懸賞でバラ撒かれたようで…このマリオにはポッカ版と言われるバージョン違いがあります。バーミンのミズノ版ぐらい珍しいという訳ではないのが悲しいところで、このポッカ版、中古市場でやたら見かけます。外側の化粧板の上に、ポッカと書かれているだけなので、色もまったく同じ。やはり余ったマリオに印刷してバラ撒いたな…
 このファミコンやアーケード版よりも古い、正真正銘の初代マリオブラザーズ、その特殊な形も災いしたのか現在のゲーム機で復刻されていません。通常版でもポッカ版でもあまりお値段変わらず(2012年当時)お手頃です。傑作をぜひお手元に!

【特別編②】 GAME&WATCH シルバー VS ワイドスクリーン画面サイズの比較

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ゲームウオッチの画面サイズへの注目

 オクトパスやシェフで有名な『ワイドスクリーンシリーズ』は、初代ボールやファイアなどの『シルバーシリーズ』、マンホールやヘルメットなどの『ゴールドシリーズ』に比べ、画面サイズが1.7倍になりました、というのが登場時のキャッチコピーでした(以下の記事をご参照ください)

【第9作】 PR-21 パラシュート - どこでもGAME&WATCH ~ゲームウオッチ全機種紹介~

 令和2(2020)年11月13日に発売された、ファミコンスーパーマリオブラザーズが遊べる「カラースクリーン」(前回記事【特別編①】で少しご紹介)ですが、『画面サイズが2.36インチ』と公式発表されました。恥ずかしながら、それまでゲームウオッチの画面が何インチなのか考えたことがありませんでしたので、それまでのワイドやシルバーの画面は何インチなのだろう、と少し気になりましたが、すぐに忘れてしまっていました。

☆ シルバーシリーズの画面サイズが2cm角!?

 先日、当ブログ読者の方からコメントをいただいたのですが

ゲームウオッチの開発にあたり「ゲーム画面サイズは最低でも5cm角は必要で、そのサイズで作ると採算が取れない、と技術者はゲーム&ウオッチの開発に反対したが、横井軍平氏は、雑誌に写っている女性が持つ本の表紙は2cm角だけど、タイトル文字まで読める。画面サイズは2cm角程度で十分だ、と説得して開発をすすめた」 という逸話がありますが、動画などで初期ゲームウオッチを見ても、 画面サイズがそこまで小さいようには見えません。ボール(BALL)の画面サイズを教えてください』(文章は一部編集しています)

という面白い依頼が来ました(恥ずかしながら、そんな逸話知りませんでした)。さすがにどう見ても2cm角ではありません。しかし、5cm角でも相当小さく感じるのは、昨今のスマートフォンと比べてしまうからかもしれません。横井氏の逸話が本当だとして、この発言は「2cmあればいいが、5cm未満でいい」という趣旨のような気もします。

 そこで、せっかくなので ①『初期シルバーシリーズの画面サイズと、ワイドスクリーンの画面サイズは本当に「一辺5cm未満」なのか』 ② 『シルバー・ゴールドからワイドになった際、本当に画面サイズが1.7倍になったのか』をご依頼にお応えしつつ、私の興味本位で調べてみました。

☆ シルバーシリーズの縦横サイズ

 まず、ご依頼のボールの画面サイズですが、シルバーシリーズとゴールドシリーズはすべて同じ画面サイズです。なので、ボールを測っても良かったのですが、せっかくなので割とレアなシルバーシリーズの最終作「ジャッジ」の高さから測定します。

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 いわゆる「ベゼル(枠)」部分の黒いところはディスプレイではありませんので、ベゼルの内側からのサイズを測定しますと、高さは約2.5cmでした。続いて、幅も測定してみます。

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 幅はちょうど4cmでした。ご指摘のとおり、5cm未満ですね。いただいたお話のとおりです。次に、ワイドスクリーンも測ってみましょう。

ワイドスクリーンシリーズの縦横サイズ

 ワイドの作品は、あえてミッキーマウスにしてみました。

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 これもベゼルの内側から測りますと、高さは約3.4cmでした。9mmも大きくなったことになります。幅はどうでしょう?

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 幅は5cm!!!(すいませんベゼルの外側から測ってしまってましたので調整5cm)横井さんが技術者の意見を尊重して5cmに合わせてきたのでしょうか。

 ミッキーマウスに象徴されますように、当初は大人向けの携帯ゲーム機だったのですが、子どもにも相当売れたことにより、一部子ども向けに方針変更せざるを得なくなってきていました。当時、液晶で複雑な表現を実現するためには、サイズをもう少し大きくしたかったという事情もあったと思います。結果的に画面サイズはこの大きめワイドスクリーンが標準となったのは皆さまご承知のとおりです。

☆シルバー・ゴールド → ワイドは本当に1.7倍?

 ワイドの発売時に「1.7倍」と宣伝していましたが、ワイドは本当にシルバーの1.7倍なのでしょうか?

シルバーゴールド 2.5cm × 4.0cm = 10平方センチメートル

ワイドスクリーン  3.4cm × 5.0cm = 17平方センチメートル

驚きました。本当に1.7倍でした。しかもピッタリです(ベゼルの内側からちゃんと測ればよかった)。

 というわけで、今回はゲームウオッチの画面サイズに注目して記事を書いてみました。ご質問いただきました方、回答となっておりますでしょうか?

 しばらく記事も滞っておりますが、ぼちぼち書いていければと思っております。今後とも当ブログをよろしくお願いいたします。

【特別編①】 GAME&WATCH ワイドスクリーン・カラースクリーン外箱の比較

 

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ゲームウオッチ35年振りの新機種登場

 令和2(2020)年11月13日、レトロゲームファンにとっては歴史的な日になったことでしょう。
 国内発売としてはブラックジャック以来35年振り、最後の機種となった海外発売のマリオ・ザ・ジャグラー以来29年振りとなった新機種、スーパーマリオブラザーズが発売されたのです。
 スーパーマリオ2種、そしてマリオの顔があしらわれたボールの計3種のゲームが楽しめるフルカラー液晶の夢のようなゲームウオッチです。シリーズ名もついて、その名も「カラースクリーン」です。35年の時を経て、ついに本物のカラー液晶が実現されたのです。


ゲームウオッチ カラースクリーンの外箱

 カラースクリーンのゲーム内容は、おいおいこちらでもご紹介しますが、私がまず歓喜したのは、その再現性の高すぎる外箱です。手に取った瞬間、まるでワイドスクリーン中期以降の外箱そっくりの外観です。再現率が高いので、なにはともあれ写真でご紹介したいと思います。

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 この写真は、今回新発売されたカラースクリーンとワイドスクリーン中期のファイア、後期のタートルブリッジの外箱を並べたものです。サイズも含め、デザインもほぼ踏襲されています。カラースクリーンの外箱にはプラスチックのスリーブがついていますが、この写真はスリーブをつけた状態です。

 

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 次の写真は、スリーブを外した状態のカラースクリーンです。スリーブを外すと、ゲームタイトルがボールになっています。この箱だけ見比べても、非常に再現率が高いことがよくわかります。

 

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 さて、ワイドスクリーン初期の箱は?という疑問をお持ちの方もおられるかもしれません。この写真は、ワイドスクリーン初期のオクトパスポパイの箱と、中期のシェフの箱を並べたものです。わかりますか?ゲームウオッチのロゴを含め、「WIDE SCREEN」の文字、ゲームの絵までが初期型では大きく描かれています。なお、シェフ以降に生産されたオクトパスなど初期型の外箱は、箱のデザインが中期型に合わせて改訂されています。なので、こちらでご紹介しているポパイの初期型の箱は生産期間が短く、あまり出回っていません。


ゲームウオッチ カラースクリーン外箱の側面は

 カラースクリーンのすごいのは、側面のデザインまでこだわって作られていることです。次の写真は、スリーブをつけた状態の側面です。

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 スリーブにキラージュゲムパタパタがデザインされています。並べているのは、ワイドスクリーンの各作品です。ミッキーマウスのところにカラースクリーンを入れてみました。どうでしょう?39年の時を経てもデザインに違和感がありません。うっすらと縦筋が入っていますが、これはカラースクリーンの外箱がダンボール製だからです。他の機種はすべて厚紙の外箱です。

 

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 次に、開封口側の側面です。モデルナンバー#価格Nintendoのロゴの順に記載されています。発売年を記したものと記していない機種があるのですが、ここで撮影しているものは恐らくいずれも発売当初のものだと推察されますので、どういう基準で発売年を記しているのかはわかりません。
 そして、カラースクリーンはSM-35というモデルナンバーが付されています。まさに、スーパーマリオ35周年を表したモデルナンバーですね。


☆ 更新が遅れていますが・・・

 カラースクリーン スーパーマリオブラザーズのゲーム内容については、多くのサイトで紹介されており、当サイトでもおいおいご紹介いたしますが、まずは発売順にご紹介していこうと思っています。
 また、海外発売版のご紹介も特別編として検討していますので、気長にお待ちいただければと思います。

【第23作】 JR-55 ドンキーコング2

発売日 昭和58(1983)年3月7日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 ブラウン
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 5,000円
(中程度、本体のみ)

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☆ 久しぶりの新作は2作連続発売
 
 ドンキーコングの爆発的な売上げから年が明けた昭和58(1983)年、もはや前年までのような売れ行きに陰りが見えてきたゲームウオッチは、これまでのように毎月次々と発売されるような新作開発スピードではなくなっていました。
 ところが3月、任天堂はわずか1週間の間隔で新作を2作発売したのです。
 1つは次回登場する、マリオブラザーズドンキーコングでは救助マン(たぶんマリオ)として、そしてドンジュニで初めて正式に『マリオ』の名前を付けられ悪役として登場した彼が、スピンオフ作品として兄弟で単独タイトルを初めて獲得した作品です。以降、現在においてまでドンキーコングを凌ぐ人気者となったのはご存知の通りです。
 もう1作、マリオの前に発売されたのが、今回ご紹介するドンキーコングの続編です。
 
 
☆ シリーズ3作目だけどパート2
 
 「続編はドンジュニじゃないの?」という意見も多数ある中、あえてほぼドンジュニ同様の2がマルチスクリーンで発売されました。
 前々作のドンキーコングが画面2枚のマルチスクリーンだったのに対し、前作ドンジュニは廉価版の画面1枚のニューワイドでした。このドンジュニを充実させて、マルチスクリーンで改めて続編を、というコンセプトだったようです。
 なので、タイトルはあえて2。製品につけられるモデルナンバーの英字もドンジュニと同じJR。任天堂は、人気のドンキーコングの続編+翌週発売のマリオで再びゲームウオッチのヒットを狙っていたものと思われます。
 
 
☆ ストーリーはドンジュニ同様だが
 
 ゲームの舞台はパート2だけにドンジュニとほぼ同じで、主人公はジュニアです。マリオに捕らえられたお父ちゃんコングを助けるべく、お父ちゃんが繋がれている鎖のカギを4か所開けて助けるゲームです。
 なるほど、前作ドンジュニでお父ちゃんが逃げなかったのはまだ捕まってたからなんや!と無理に納得させてこのゲームをプレイしてください。
 なお、このゲームではそんな屁理屈を言えないように、鎖を4か所外せばちゃんとお父ちゃんコングを助け出すシーンが映し出されます。
 
 
☆ まあまあ面白いけどめんどくさい…
 
 今回は、カギがスタート地点すぐに置かれています。スタートしてすぐにジュニアはカギを上の画面に放り投げます。これを忘れると、また下画面まで戻らないといけません。
 上画面に移ると、さっき投げたカギがまたすぐ置いてあるので、もう一度カギを投げます。すると、お父ちゃんコングが繋がれている4本の鎖の下のどこかにカギが飛んでいきますので、カギのある鎖を下からテケテケ登ってカギを開けると1本クリアです。この鎖、前作ドンジュニのツタのように横に移ったり飛び降りたりできません。上下しか動けないのに、敵の鳥が飛びまくりますので、かなり厳しい状況になります。
 このゲーム、最大の難点が「カギを開けたらスタート地点まで自力で戻らないといけない」という点です。これまでのドンキー作品では、自動的にスタート地点に戻れていました。しかし、今作はもう一度鳥やスナップジョーや新たな敵のスパーク(電気)に気を付けながら戻らないといけないんです。さすがにゲームバランスを考えてか、GAME Aでは帰り道に限り敵が出にくくなります。
 しかも、やっとの思いで戻ったら、またカギを放り投げてすぐスタートしなければいけないという…しんどい。
 
 
☆ 得点はやっぱり複雑で難しい
 
 得点制は今回もかなり複雑です。
① スナップジョーまたはスパークを跳び越えると1点
② パパドンキーの鎖を外すとスタートからの時間に応じて5-15点
③ 鎖を外したあとミス無しにスタート地点に戻って次のカギを放り投げると5点
④ 鎖を4か所とも外してパパドンキーを助けるとボーナス20点
今回は敵を倒せるフルーツが無くなりましたので、敵を倒すことができず、敵からの点数加算が無くなりました。
 ミスパターンは3つです。
① スナップジョーにかまれる
② スパークに当たる
③ 鳥につつかれる
最高得点は999点、ミスクリアは300点ですが、今回はドンキー1と同様、1人(ドンジュニやから1匹か…)追加されるだけです。300点でミスが無ければチャンスタイムとなり、次にミスをするまですべての得点が2倍になります。
 このゲームは難易度が高いので、チャンスタイムを活用しないと最高得点は難しいでしょう。
 
 
☆ やっぱり復刻されず
 
 この作品、やはり難度やゲームの売れ行きからか、未だDS等で復刻されていません。海外からの逆輸入版も含め、割に中古品が出回っているので、実物を入手してプレイしたい一品です。
 なお、ドンジュニはこの他に、後に発売されるカラースクリーンテーブルトップ・パノラマスクリーンにゲーム内容を一部修正し、カラー液晶となって移植されました。これらについては、パノラマスクリーンの当該ゲームの項で改めて解説したいと思います。

 

【第22作】 GH-54 グリーンハウス

発売日 昭和57(1982)年12月6日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 グリーン
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 7,000円
(中程度、本体のみ)

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草食男子がスプレー片手に駆け巡る
 
 昭和57(1982)年のクリスマス商戦に間に合わせるべく、追加発売されたグリーンハウス。緑色したその本体を持っている人も少なく、割にレアものの印象です。
 私も当時から若干気になる存在ながら、ドンジュニとミッキーに挟まれてどうしても購入対象から外してしまいました。まぁ、クリスマスは結局無難にミッキー&ドナルドでしたよ。
 そんなマイナーな存在のグリーンハウスですが、穏やかな名前と反してこれがまたパニック感ハンパない熱いヤツなんです。


室内で殺虫剤撒きすぎ!
 
 舞台は温室。植物栽培してます。花を枯らす悪い尺取り虫とクモを殺虫スプレーでやっちゃうゲームです。
 単純そうでこれがなかなか熱い。上段左右には尺取り虫が、下段左右にはクモがそれぞれ花を狙ってるんです。虫めがけてスプレーすれば虫が死ぬ…という単純なゲームではないんですよこれが。
 上段左右の尺取り虫は、スプレーすればどの場所でもやっつけられます。しかし、下段左右のクモは花から一番近いところまで引き寄せないと死なないんです。一歩後退するのみ。またすぐ花を狙ってきます。
 花からより近い方が点数が高くなるので、クモを確実にやるためにも高得点狙うためにも、花から近い場所までおびき寄せてシュッシュすればいいのですが、上下画面それぞれ左右4か所も状況把握できません!正直パニックです。
 しかしこのスプレー男、操作性がいいのでがんばればギリギリ間に合います!パニックながら点数がガンガン増える感じがバーミンを思い出させます。そういやバーミンも英語の意味は害獣でしたな。


枯らした時の音がキンキンする
 
 得点は、先にも書きましたように花からより近くでスプレーすれば点数が高くなります。花から一番近いと3点、次に近いと2点、一番遠くでは1点です。
 ミスクリアは300点でオールクリアされます。ミスがなければチャンスタイムとなり、次にミスをするまで得点が2倍です。
 このゲーム、ミスをしたら花が枯れるんですが、枯れた時の音がキンキン音なんですよ。黒板に爪系の音ですね。ほんま、これだけは勘弁していただきたいです。
 なお、アラームもキンキンしています。ネコがハチに刺されて鳴くアラームです。
 
 
☆ DSソフトに収録
 
 このゲーム、名作ながらあまり出回らなかったこともあり、マルチスクリーンシリーズにしては中古品が割と高額で取引されているようです。
 しかし、嬉しいことにクラブニンテンドーの非売品DSソフト「GAME&WATCH コレクション」にオイルパニック・ドンキーコングと共に収録されました。マルチスクリーンの楽しさが現在のゲーム機で見事に再現されています。
 実物を無理に高額で手に入れなくても、DSで3本いっぺんに楽しめると思います。

 

【第21作】 DM-53 ミッキー&ドナルド

発売日 昭和57(1982)年11月12日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 レッド
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 3,500円

(中程度、本体のみ)

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☆ マルチ第3弾はキャラクター物

 クリスマス商戦を前にして、ゲームウオッチの新作ラインナップはドンキーコング&ドンキーコングJR.と、ドンキーシリーズ一辺倒で少し寂しいものがありました。ドンキーコングの売れ行きも鈍化してきたこともあり、画面は2枚で楽しさ3倍!のマルチスクリーンで子ども&女性向けにかわいいやつを一発かましとこう!任天堂の会議で誰かが言ったのかどうかわかりませんが、マルチ第3弾はキャラクターライセンス作品、ミッキー&ドナルドとなりました。


☆ ミッキーが火を消してる訳ではない

 舞台は火事のビル。ファイアを思い出す設定ですが、このゲームでは飛び降りません。
 ドナルドが屋上から火を消そうとホースを構えています。怠け者のグーフィーがポンプ車から水を送るのですが、すぐ怠けて水が途絶え、火事が広がってしまいます。水を待つドナルドに水を送るべく、グーフィーを怠けさせないようにミッキーを操作します。なお、ホースに2か所穴が空いているので、大きな水が送られた時はミッキーがホースを押さえて水を送らないといけません。
 水が漏れてもミスにはなりませんが、水が届かなくなってしまいますので、火はすぐに燃え広がります。屋上のドナルドまで火が来てしまうとミスになります。ドナルドは焼け出されてしまいますが、右側にあるクレーンに何とか助けられます。ファイアのように死んだりしないのが、子ども&女性向けといったところでしょうか。


☆ 難易度は低めだが面白い

 ドナルドが焼け出された時だけ、ミスになります。水が漏れても、グーフィーが怠けてもミスにはなりません。
 得点パターンは
① 1か所火を消すごとに1点
② すべての火を消すごとにボーナス点
の2つです。すべての火を消すと、ミニーマウスのハートを受けるオマケつきです。
 最高得点は前作同様999点です。ミスクリアは300点、すべてのミスがクリアされます。もちろん、300点到達時にミスがなければ、得点が点滅して次にミスをするまでチャンスタイムになります。このチャンスタイムに限り、水漏れを起こすとチャンスタイムが終わってしまいますので要注意です。
 難易度は低年齢層&女性向けであったためか、低めになっているのが特徴です。低めではありますが、非常にゲームバランスが良く、実際にプレイしても心地良く得点できます。
 前作ドンジュニが若干複雑で難しいことを考えれば、画面は2枚でもずいぶんスッキリしたなという印象です。
 この作品は、左側の上下キーでミッキーを、右側の左右キーで屋上のドナルドを操るという、同時に2つのキャラを操作する特徴が強く出ています。
 一見複雑ながら、その操作性の高さと、しっかり者のミッキー+お調子者のドナルド+怠け者のグーフィーそれぞれのキャラクターが強く印象付けられます。


☆ 大量に作ったが…

 この作品は、キャラクターライセンス物のため、現在は実物を持っていないとプレイできません。しかし、このゲームほど新品が出回っているものはないのではないでしょうか。
 とにかく、クリスマス商戦に向けて本作をプッシュした任天堂でしたが、肝心の売れ行きはイマイチに終わったようです。
 いや、恐らく真実はこうです。ドンキーコングの売れ行きが鈍化したので、ドンジュニとミッキー&ドナルドをプッシュしたけれど、意外にも初代ドンキやオクトパスなど過去の名作が順調に売れて、プッシュした2作が思ったように伸びなかったというのが真相のようです。
 さらに、エポック社のモンスターパニックも順調に伸ばしていましたし、他社からも多くの携帯ゲームが発売されて、売り上げが分散化したことも不振の要因にあったと思われます。
 ゲームウオッチ発売から2年半、任天堂の独り勝ちという状況ではなくなってきたんですね。


☆ きれいな実物で遊びたい

 というわけで、この作品と前作ドンジュニは、割ときれいな中古品がまだ流通しています。本作はライセンス作品のため、他のゲーム機で復刻されていませんから、ぜひきれいな実物を入手されて、大切に遊んでいただければと思います。
 なお、きれいな本体を触れずに大切にされる方も多いでしょう。コレクターの方がそうされる心理はよく分かるのですが、ゲーム機はあくまで遊ぶためのもの。賛否両論あるかとは思いますが、実際に遊んでなんぼだと個人的には思っています。私はその方が変なストレスもなく楽しめます。遊んであげた方がゲーム機も喜んでいると思いますから。

【第20作】 DJ-101 ドンキーコングJR.

発売日 昭和57(1982)年10月26日
ニューワイドシリーズ
本体色 ホワイト+グリーン
発売価格 4,800円
中古品参考価格 3,500円
(中程度、本体のみ)

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大人気シリーズ続編が廉価版で登場

 
 売れに売れたマルチスクリーンシリーズのドンキーコング、あまりの売れ行きに生産も開発も追いつかない程だったようで、ドンキーコング以降ゲームウオッチの新作が約5か月程ストップしてしまいます。
 この間にも、ドンキー祭りは続くこと続くこと。京都の子ども達が楽しみにしている夏の風物詩、地蔵盆にも、ドンキーコングを持ち寄る子どもがたくさんいました。地蔵盆のくじ引きの一等にも、文句無しにドンキーコングが飾られていました。
 そんなドンキーコングに待望の続編が登場です。その名も、ドンキーコングJR.(ジェイアール、ではありません 大文字です)。サイズはマルチスクリーンではなく、ワイドスクリーンと同じ大きさの1画面となりました。2画面じゃなくなった代わりなのか、価格が抑えられて4,800円となりました。電池サイズもマルチスクリーンシリーズと同じ、LR44(またはSR44)となり、電池サイズ分ワイドスクリーンよりもほんの少し厚みが加わりました。
 この廉価版シリーズを、これまでのワイドスクリーンシリーズと分けて「ニューワイド」と呼んでいます。正式なシリーズ名ではない点が、シルバーシリーズ同様です。


グリーンシルバーがオシャレ

 さて、そのニューワイドですが、これまでのワイドスクリーンから更に進んだデザインとなりました。
 本体色は表面プラスチックがホワイト、裏面がグリーンと2色に色分けされています。さらに、表面はメタリックグリーンに輝き、画面枠にタイトルとNINTENDOの社名をシルバーベースに配した化粧板で覆われました。この本体がなかなかかっこいいんです。
 残念ながら、十字キーは採用されず、小さな4つボタン式擬似十字キーとなりました。右側のジャンプキーと合わせて五つ目操作ボタンです。


ゲーム内容は簡易版ドンキーコング
 
 マリオ(救助マンじゃなくなりました)に捕らわれたコングを、その子どもであるジュニアが助けるゲームです。
 ジュニアは、マリオが出してくるスナップジョー(脚を挟むワナみたいなやつ)や鳥をかわしながら、左上手にぶら下がっているカギを取りに向かいます。途中、スナップジョーと鳥をフルーツに当てるとボーナス点が入ります。左上手のカギにうまくタイミングを合わせて斜め上にジャンプすると、カギを取れます。そのカギで檻が1/4だけ開きます。これを4回繰り返すとコングを救出です。救出するとコングが笑顔になるのですが、前作同様、逃げ出さないパターンなので、またマリオに捕まってしまうのです。
 …これ、前作そっくりなんですよね。設定が変わっただけで、4回繰り返すところや最後のジャンプして飛びつくところまでそっくりです。
 評価できる点も多くあります。前作同様の快適な操作性、ツルに捕まりながら横移動できる点など。
 余談ですが、ほんと、ツルに捕まって横移動できないとストレス感じますよ。マルチスクリーンシリーズのドンキーコング2、これかなりのストレスなんですよね…


点数が複雑なところまでそっくり

 ドンキーコング同様、点数は複雑です。
① スナップジョーをジャンプで飛び越えるごとに1点
② 上段のスナップジョーにフルーツを当てると3点
③ 下段のスナップジョーにフルーツを当てると9点
④ 鳥にフルーツを当てると5点
⑤ カギに飛びつき檻を開けるごとにかかった時間に応じて5-20点
⑥ すべての檻を開ければボーナス20点
…前作と基本的には同じなんですが、かなり複雑です。もはや正しく点数が入っているのか全く不明です。
 前作同様、ミス設定も多くて、スナップジョーに当たるのはもちろん、鳥にもなす術無くやられてしまいます。カギに飛びつけなかった場合も、哀れ下に落ちてミスとなります。
 今作は、300点でのミスクリアがオールクリアに戻りました。前作は一人増えるだけだったんですよね。300点までミスがなければ次にミスをするまで得点が2倍になるチャンスタイムも引き続き設定されています。最高得点も前作同様999点です。


売れたけれど飽きられた…

 久しぶりの新作でもあり、続編ということで、売れることは売れたようです。ただ、これだけそっくりだとユーザーには飽きられてしまう結果となりました。
 任天堂も売れるだろうと出荷をかなり増やしたらしく、今でもいい状態の中古品を見かけることが多いです。
 任天堂としては、ドンキーコングまでで十分利益を出したでしょうし、いよいよファミリーコンピュータの開発に移行する段階だったのでしょう。力が入らなかった訳ではなかったのでしょうけれど、ゲームウオッチの限界がこのドンジュニで見えたような気がします。実際、本作以降ゲームウオッチは急速に下火となってしまいました。
 なお、本作はDSiウェアで配信されています。DSでも十分楽しめますが、前述のように状態のいい中古品がたくさん流通していますので、ぜひ実物で楽しまれてはいかがでしょうか。

※注 ニンテンドーDSiウェアを含むニンテンドーDSiショップは平成29(2017)年3月にサービスを終了しています。

【第19作】 DK-52 ドンキーコング

発売日 昭和57(1982)年6月3日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 オレンジ
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 4,000円
(中程度、本体のみ)

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最多売上タイトル登場!

 ゲームウオッチに番付表があるとすれば、多くの方が文句なしに東の横綱に推すであろうビッグタイトル、ドンキーコング
 売上でもゲーム内容でも、文句なしに素晴らしいのは言うまでもありません。そしてオイルパニックに続く2枚の液晶と、このゲームで初めてお目見えした十字キー。今のDSにつながるすべてのコントローラーの基本形はここで完成したのです。


マリオじゃなく救助マン(人)だから!

 ゲーム内容についても有名なところですが、アーケード版やファミコン版とは少々異なるのでここで少し解説します。
 レディ(ピーチ姫ではない)をコングにさらわれました。勇敢な一人の男が救助に向かいます。男の名は救助マン(人)。マリオでもルイージでもなく、救助マン(人)です。かなり違和感ありますが、そんなことはいいんです。ゲームが面白いんですから。

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 さて、そんな救助マン(人)ですが、コングがさらったレディを人質にビル建設現場に逃げ込みました。建設現場と言えばヘルメットを思い出しますね。コングは最上階からバケツやペンチ…ではなくて、樽をいっぱい落としてきます。
 樽をジャンプして、動く鉄骨をかわし、クレーンを操ってワイヤーに飛び移り、コングを支える足場を崩しましょう。4回支えを外せばコングの足場は崩れ、見事クリアです。ちなみにレディはハートマークいっぱい出して感激するものの、助けたのに降りてきません。そんでまたコングに捕まります。おいおい。
 なお、アラームキャラクターは続編で主人公となるジュニア…ではなく、アラームミニコングです。どう見てもジュニアなんだけどなぁ。


得点は複雑だが面白い

 得点はかなり複雑です。
① 樽を最下段でジャンプするごとに1点
② 樽を2段目でジャンプするごとに2点
③ クレーンに飛び移り支えを外すごとにかかった時間に応じて5-20点
④ コングの足場を崩せばボーナス点20点
です。
 ミスパターンも多いです。樽に当たる、動く鉄骨に頭をぶつけたり当たる、クレーンにジャンプできず落ちる等、これらすべて救助マンが1人減ってミスとなります。
 もちろん、ミスクリアも300点で設定されていますが、今回のミスクリアはオールクリアではありません。救助マンが1人増えるだけです。300点でミスがなければチャンスタイムになり、次にミスをするまで得点が2倍になります。
 得点やミス設定がこれまでに複雑ながら、得点も入りやすく、ワンパターンではないことから非常に面白く感じることと思います。


大発明!十字キー

 このゲームは誰が何と言おうと十字キーに尽きます。
 今のゲームでは当然になっている、左側に十字キー。世界ではじめて本作で採用されました。このコントローラーを見た時にはすげー!と思いましたよ。一目でそのキーが主人公を上下左右に操作するものだとわかりましたから。
 このゲームの大ヒットの裏には、ゲーム内容の他にも、現在では当たり前になっているこうした工夫も少なからずあったのだろうと思います。


現在でもプレイ可能な名作

 このゲームも、オイルパニックの項でご説明した非売品のDSソフト「GAME&WATCH コレクション」に収録されています。
 当時の大ヒット作品を気軽にDSで楽しめます。
 なお、大ヒット機ゆえに中古品もかなりたくさん流通しており、手頃な値段で実物を入手することが可能です。ただ、ライオンの項でご説明したように、なかなかきれいな本体を見かけないのが残念なところです。

【第18作】 OP-51 オイルパニック

発売日 昭和57(1982)年5月28日
マルチスクリーンシリーズ
本体色 ホワイト
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 4,000円

(中程度、本体のみ)

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☆ マールチ マルチ♪ ってCMが印象的


 いやー、ついに出ました。コンパクトケースを参考にしたという開閉式の本体に、液晶スクリーンが2枚になった斬新なスタイル、マルチスクリーンシリーズです。
 しかも価格は従来と同じ6,000円。これを初めて見た時は衝撃でした。さすが任天堂、斬新すぎます。外国の方が踊りながらゲームしてて、スクリーンが2枚で楽しさ3倍!というCMを見た当時の子どもたちは驚愕したようです。
 このマルチスクリーンシリーズからは、あのビッグタイトル、ドンキーコングマリオブラザーズもこの後に登場しますからお楽しみに。
 さて、記念すべきマルチの第1弾タイトルは、今回ご紹介するオイルパニックです。今回の舞台はガソリンスタンド。いやー、危険な香りがプンプンいたします。


☆ たった3滴で満タンになるバケツ…

 ゲーム内容は、一見平和なガソリンスタンド。その事務所では、何と天井のオイル管から3か所もオイル漏れしています。主人公は上の画面でオイルをバケツに受けます。バケツはたった3滴で満タンになりますので、溢れる前に下の画面の事務所のベランダでドラム缶を持ってウロウロしている仲間にオイルを受けてもらいます。
 上画面の左右端は、下画面の事務所と繋がっていますので、オイルを漏らさないように、下の仲間が動くタイミングを見計らってオイルを移さないといけません。
 上画面でバケツから溢れさせたり、受けられなければ、事務所内が火事になりミスになります。
 また、下画面でドラム缶に流すのを漏らすと、下の給油待ちのおじさまとお姉さまがオイルまみれになってしまいミスになります。
 このゲームも表情が豊かですよ。オイル漏れという爆発を起こしかねない危険な状況なのに、主人公は歯を見せてにやけながらオイルを受けてますし、ドラム缶担ぎながらうろつく仲間もお調子こいてマイペースにウロウロしてます。オイルぶっかけられたお姉さまに至っては、牙をむいてキツネ目でハイジャンプしてキレてます。
 アラームキャラクターはポリスマン。火事になりそうなのにやっぱり助けてくれません。


☆ 上ミスと下ミスは別会計

 得点は、上画面でオイルを1滴受けるごとに1点。下画面のドラム缶にオイルを移せばオイルの量に応じて1・2・5点。バケツ満タンで移せばボーナスの5点が入ります。しかし、粘りすぎるとウロウロするドラム缶野郎とのタイミングが合わず、火事になってしまいます。
 得点制度は、若干の変更がありました。最高得点はワイドスクリーン前期までと同じ999点に戻りまして、ミスクリアも300点の1回のみになりました。やっぱり9999点は物理的に不可能でしたから、良かった良かった。
 ノーミスで300点に達するとチャンスタイムですが、ここまでノーミスで達するのがなかなか難しい。チャンスタイムにはドラム缶に入れた時の点数が2倍+ドラム缶野郎が2人になってウロウロしなくなります。しかし、チャンスタイムはわずか20-30秒。得点稼ごうとして急いでドラム缶に流し入れようとした瞬間に、チャンスタイムが終了してお姉さまにガソリンかけちゃうというパターンもしばしばです。
 このゲームの特筆すべき点は、上画面のミスと下画面のミスはそれぞれ別にカウントされることでしょう。
 上画面か下画面のどちらかで3ミスにならないと、ゲームオーバーにはなりません。つまり、上で2回ミスになって、下で2回オイルまみれにさせてもゲームオーバーにはなりません。逆に、上のミスが無くても下で3回ミスになるとゲームオーバーになります。なので、厳密にはポパイやミッキーマウスで導入された半ミスではないということになります。


☆ 2画面を駆使する名作だが…

 このゲームがすごいのは、2画面を常に見比べながらプレイする点にあります。マルチスクリーンシリーズには、別に2画面でなくても良かったのではないのかな、というゲームが多い中、このゲームに関しては2画面必須です。
 名作であるはずの本作でしたが、残念ながら次作ドンキーコングの陰にすっかり隠れてしまいました。もちろん、ワイド後期作品よりもはるかに売れたでしょうし、私の周りでも持ってる人いましたよ。でも、当時はやっぱり隣のトモオちゃんが持ってたドンキーコングの方が面白かったなぁ。オイルパニックも4軒隣のリョウくんに何度か借りたけど、あんまり面白いと思いませんでした。今やるとオイルパニックの方が好きなんですけどね。


☆ DSでやるとオイルパニックそのまま

 この本体、どうやら焼けやすいらしく、外が黄ばんだ本体ばかりでなかなかきれいな白色の本体を保った中古品を見かけません。中古品は数多く出回っているので、手に入れるのは容易なんですが…
 このゲーム、クラブニンテンドーの景品である非売品DSソフト「GAME&WATCH コレクション」に忠実に再現されていますので、実物が無くてもDSで楽しめます。しかも、白いDS本体でプレイすると、オイルパニックそのままです。このソフトには、次作ドンキーコングと、マルチスクリーン4作目のグリーンハウスも収録されています。いやー、液晶技術の進歩はすごい!

【第17作】 SP-30 スヌーピーテニス

発売日 昭和57(1982)年4月28日
ワイドスクリーンシリーズ(後期)
本体色 パープル
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 7,000円
(中程度、本体のみ)

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ワイドスクリーンシリーズ最終作

 キャラクターライセンス第3弾となったのは、アニメ「ピーナッツ」の主人公で犬のスヌーピーワイドスクリーンシリーズ最後の作品となりました。
 実は、この後もワイドと同じサイズの作品が発売されるのですが、価格が4,800円と安くなり、使用する電池のサイズも若干変更がなされるなどしました。この価格が安いシリーズはこれまでのワイドスクリーンシリーズと区別するため、ニューワイドと呼ばれています。


☆ 初の三つ目操作ボタンの作品

 さて、スヌーピーテニスに戻ります。見た目は前作までのワイドスクリーン後期に見られるブラックの本体から、ワイドスクリーン前期までのゴールド+本体色のパターンに戻されました。
 一番目立つのが、そのボタン。右側に上下2つのボタン、左側に1つのボタンの三つボタンになりました。これはゲームウオッチ初の操作パターンになりました。


スヌーピー、ふて寝すんな!

 ゲームの内容はゲームウオッチらしく単純です。チャーリーブラウンがサーブを上中下3段の高さに打ってくるので、木の上のスヌーピーを操作して打ち返すというものです。たまに、ルーシーが出てきて、スヌーピーの球を打ち返すので、それも打ち返さないとミスになります。しかもルーシーの球速はチャーリーの2倍。
 ミスすると、後ろのビンが割れて、バツの悪いスヌーピーは犬小屋の屋根でふて寝してしまいます。チャーリーは「ボク、知らないよ!」って言わんばかりにラケットを放り出します(と説明書には書いてあります)。ちなみにミスマークは割れたビンです。
 アラームキャラクターは、小鳥のウッドストック。相変わらず芸が細かいです。ゲームウオッチスヌーピーの素敵なコラボで素晴らしい作品に仕上がっていると思います。
 得点についてですが、最高得点は9999点、ミスクリアが百の位が2・5の時で、他のワイド後期作品と同様です。
 得点パターンは2つです。
① チャーリーブラウンの球を打ち返すと2点
② ルーシーの球を打ち返すと3点
 ミスクリア時にミスがなければ、チャンスタイムになります。得点表示が点滅している間、得点が通常の2倍になります。これも、ファイアアタックと同じですね。
 ちなみに、チャンスタイム中にミスをすると、通常得点に戻ります。もったいないので、チャンスタイムを少しでも長く続けるようにしましょう!


☆ ライセンスなので復刻なし

 このスヌーピーテニス、残念ながら前作同様、ゲームウオッチ冬の時代の真っ只中に発売されたこともあり、売れ行きもあまり良くなかったようです。
 本作もキャラクターライセンスゆえ、他ゲーム機へ復刻されていません。実物でないとプレイできないのが残念なところです。
 しかも、売れ行きが悪かったためか、ゲームウオッチファンに加えスヌーピーファンも含めた争奪戦を呈しており、ワイドスクリーンシリーズの中では比較的高値で推移しています。
 とはいえ、ぜひプレイして楽しさを実感していただきたいゲームの1つです。

【第16作】 ID-29 ファイアアタック

発売日 昭和57(1982)年3月26日
ワイドスクリーンシリーズ(後期)

本体色 オレンジ
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 6,000円
(中程度、本体のみ)

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ファイアとは全く異なる設定

 ワイドスクリーン後期は、タートルブリッジの項でもご説明したように、既存のゲームウオッチから大きく変貌した時期でもあります。そんな後期ワイド第2弾として登場したのは、ファイアアタック。名作ファイアの続編ではありません
 舞台は、アメリカ西部。砦を守る1人の兵士が、4方向から砦に火をつけようとするインディアン達から砦を死守するというゲームです。
 4方向?と聞いてピンときた方もいらっしゃるかと思います。そうです、ミッキーマウスEGG以来3作品ぶりとなる四つ目ボタンとなりました。


前作に続きかっこいい本体

 しかし、今回も強引な設定です。自分以外だーれもいない砦。しかもすぐ放火されてしまうこの弱小砦。誰も何も助けてくれないのに、アラームはラッパ兵です。ラッパ兵、助けてやれよ。
 本体表面は前作から引き続き、美しいブラックに6本線。本体ベース色はオレンジ。持っていてかっこいい本体です。この本体デザインは本作が最後となります。わずか2作で終わってしまったのが残念です。


慣れない操作に賛否両論

 本作でよく批評されるのは、その操作性についてでしょう。これまでの作品では、その位置に主人公を操作すれば勝手に叩いたり受け止めたりしてくれていました。ところが、本作では主人公をその位置に移動させてから、もう一度その方向ボタンを押さないと叩いてくれないのです。
 この2度ボタンを押さないといけないという操作性の悪さが「めんどくさい」「慣れない」と批判を受けることとなりました。
 しかし、インディアン(当時の表現で呼称します)や彼らが投げるたいまつのスピードはバーミンやマンホールよりも遅いです。なので、操作性うんぬんで言えば、バーミンの方がよっぽど難しいですね。あれは後半パニックですもん。


チャンスタイムに点数が稼げる

 点数は、1回火を落とす・インディアンを叩くごとに2点です。
 今作も、最高得点は9999点。もちろん、ミスクリアも百の位が2・5になるごとにクリアとなります。9999点はほんと途方もない数字です。これだけは勘弁していただきたいものです。
 また、前作で導入されたチャンスタイム制ですが、本作では前作よりも充実して導入されています。百の位が2・5の時にミスがなければチャンスタイムとなり、点数表示が一定時間点滅します。前作では、亀が潜らないというものでしたが、本作ではチャンスタイムになると入る点数が2点ではなく5点となります。これにより、チャンスタイムにかなり点数が入るようになりました。これが好評だったのか、以降の作品のチャンスタイムは多くがこの方式になりました。


やっぱり復刻されない

 この作品も、実物を手に入れないとプレイできないゲームとなっています。ネイティヴ・アメリカンに対する差別問題も事情としてあるのかもしれません。また、前作以上に人気が無かったこともあるでしょう。
 この作品の泣かせるところは、前作同様、液晶が弱いことでしょう。あれだけきれいなカラーフィルムを挟み込んでいるのに、ところどころ黒ずんでいるものが多すぎます。コレクターの方は収集に苦労されておられることと思います。ほんと、このブラックシリーズは集めるのに難儀しますわ…



【第15作】 TL-28 タートルブリッジ

発売日 昭和57(1982)年2月1日
ワイドスクリーンシリーズ(後期)
本体色 ホワイト
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 6,000円
(中程度、本体のみ)

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☆ 不遇の名作シリーズが登場

 オクトパスで頂点を迎えたゲームウオッチ第2期黄金期も、クリスマス・お正月を過ぎて下火になってきました。
 ワイドスクリーンシリーズでは、オクトパスを除き、受け止め系のゲームが続くなど、マンネリ化してきたようです。
 携帯ゲームではエポック社からパクパクマンが発売され、これがヒットするなど、他社からもライバル機が登場し、任天堂ゲームウオッチは発売から2年を待たずに初の苦境とも言える冬の時代を迎えます。
 そのような状況で発売された、タートルブリッジ。オクトパス以来となる久しぶりの戦略ゲームであり、背景の美しさ、ブラック&ホワイトの斬新な本体、新しくチャンスタイムが導入されるなど、新機軸いっぱいで発売されたのですが…
 一度離れたユーザーの評価は厳しかったのです。タートルブリッジからのワイドスクリーン後期3部作はいずれも名作ながら不振に終わることになります。


☆ 斬新!浮いてるカメ→橋がわり

 さて、そんなタートルブリッジですが、これがまた大変面白い作品になっています。
 ストーリーは、探検隊が進んだ先には橋がなかったので、たまたま浮いていた亀の甲をピョンピョン飛んで、向こう岸にいる仲間に荷物を運ぶ、というものです。
 …あれ?何かに話が似ていませんか?
 そうです、因幡の白うさぎですね。あの話は隠岐島のうさぎがワニ(現在のサメ)を騙して向こう岸に渡るという話ですが、アイデアは似ています。
 タートルブリッジの魅力は何と言っても、亀のエサとなる魚が海底から出てきて、カメが潜るシーンに尽きます。そんな状況なのに、向こう岸にいるはずの仲間が顔を出してくれない時があり、その時間には荷物を渡せないのです。荷物は渡せないわ、カメは潜るわ…ポーター役の主人公はカメの上を行ったり来たり、たまに戻ったりしながら荷物を延々運び続けるのです。
 なお、GAME Bではすべてのカメが海に潜るのに対し、GAME Aでは真ん中のカメが海に潜りません。ただし、2分以上真ん中で休んでいると、魚が出てきて真ん中のカメも潜ると説明書に書いてあります。2分待つのがめんどくさくて試したことはありませんが。


☆ 途方もないハイスコア9999点

 この作品は得点パターンが
① 向こう岸の人に荷物を渡すと3点
② 荷物を渡した状態で左岸に戻ると、かかった時間に応じて2-12点
の2通りです。これまでの作品と比べると得点が多いように思いますが、なかなか得点が増えないんですよこれが。
 先にも少し述べましたが、本作以降のワイドスクリーンシリーズ後期から変更された点がいくつかあります。
 細かな変更点といえば、ACL・ALARMボタンを補強していた金属板が、細い棒などで押しやすいように凹凸をつけたことが挙げられます。本作以降の作品はすべてこの凹凸タイプの金属板になり、さらにゴールド以降の過去の作品についても本作以降に製造されたものはこの金属板に変更されました。
 また、見た目もこれまでの作品とは大きく異なりました。これについては次項『第16作 ID-29 ファイアアタック』で述べたいと思います。
 見た目以上に大きな変更となったのが、得点制度の変更です。これまで一部の作品を除いて最高得点が999点だったのですが、処女作ボール以来となる9999点となりました。
 この最高得点の大幅なアップに伴い、ミスクリア制度の増強と、ノーミス時のチャンスタイムが設定されました。
 ミスクリアは、百の位が2及び5の時にこれまでのミスがクリアになるように増強されました。また、ミスがない状態でミスクリアの値に達した場合、一定時間(20-40秒)魚が出なくなりカメが潜らなくなるチャンスタイムとなるのです。
 これらにより、得点がしやすくなったのですが、いかんせん最高得点が9999点… そこまで狙える時間はサラリーマンにはありません。
 エンドレスな絶望感がこのゲームの欠点かもしれません。ポーターがブクブク溺れている姿もお気の毒です。
 ちなみに、ゲームウオッチの生みの親、横井軍平氏(故人)は著書の中で、本作を名作と評価されています。


ゲームウオッチらしい細かい表現

 タートルブリッジは、見た目がこれまでの作品とは全く異なる斬新な本体色が特筆されます。ブラック仕上げのボディにシルバーの6本線が、過去にとらわれない新しいゲームウオッチを出そう!とした任天堂の意気込みを感じるのです。
 背景も、これまでの液晶前面だけでなく、液晶の後ろと反射板の間にもカラーフィルムを挟み、奥行きを感じる背景になりました。
 ただ、このフィルムの工夫のせいなのかどうかわかりませんが、本作タートルブリッジから 第18作 OP-51 オイルパニックあたりの液晶が特に弱く、液漏れがよく発生するのです。この4作に関しては、液晶のいい状態のものがあまり無いような気がします。
 他にも、なかなか素晴らしい表現がなされています。カメが首を動かしたり、潜って魚を追いかける姿は素晴らしいですね。主人公のポーターも溺れて苦しそうですが、なかなかいい顔しています。
 ちなみに、アラームキャラクターは海底のカニさんです。これは若干強引ながら、かわいいのでいいでしょう。


☆ 実物持ってないと味わえない

 前述の通り、ゲームウオッチ冬の時代だったこともあり、本作もあまり売れなかったようです。
 不人気だったこともあるのか、他のゲーム機にも復刻されていません。
 実物を手に入れなければタートルブリッジはプレイできないのですが、液晶の不具合を起こしている本体が多いのが辛いところです。
 私は、たまたま液晶がきれいな中古品と、液晶がダメになった新品をそれぞれ安価で手に入れましたので、液晶を交換して新品を1台作りました。いやー、新品を手に遊んだ時はうれしかったなぁ。 もちろん、新品であってもプレイしてこそゲーム。電池を入れてたまに遊ぶようにしています。
 分解は壊さない程度に自己責任で行ってください。液晶が薄くなったら偏光板の交換をしたり、ボタンが効かなくなったら基盤やボタンの掃除をしたり、自分でもメンテナンスができるようになるとなかなか便利です。分解に慣れれば、ゲームウオッチ集めが楽しくなりますよ。

【第14作】 FR-27 ファイア

発売日 昭和56(1981)年12月4日
ワイドスクリーンシリーズ
本体色 ブルー
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 8,000円
(中程度、本体のみ)

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ゲームウオッチ初のリメイク作品

 ゲームウオッチ人気の礎を築いた、シルバー版のファイア。誰もが名作と認めるその作品を、ゲームバランスを調整したうえで昭和56(1981)年のクリスマス商戦を前にリメイク発売したのがワイド版ファイアです。
 前作は曲がったビルや動く炎など秀逸な表現はあったものの、救急車に乗せないと得点につながらないことや、ミスクリア制が無かったため、子どもには若干難しいゲームになっていました。
 前作が子どもにも非常に売れ行きが良かったことから、背景のカラーフィルム化やレスキュー隊員に表情をつけるなど、若年層向けにワイド版ならではの改良を加えました。更に、ワンバウンドで1点入るようになり、点数が入りやすくなりました。もちろん、200点・500点でのミスクリアを追加しています。
 アラームキャラクターは同僚隊員です。アラームする余裕あるなら人助けしてくれって。


点数は入るが簡単ではなかった

 特筆すべきはGAME Bでしょう。GAME Aではビルの4階からのみ人が飛び降ります。しかし、GAME Bではこれが何と3階からも落ちてくるのです。しかも「おりるぞー!」みたいな間を取ってくるので、パニック感がAの5倍ぐらいあるんじゃないかと思います。これのおかげで、せっかく点数が入りやすくなって最高得点999点が見えるかと思っていたのに、Bでは逆にシルバー版よりも難しくなったような気がします。まぁ、パラシュートとシェフでタイミング外しは訓練されているので何とかなりましたが。


結局リメイクはどうだったのか

 この年のクリスマス商戦、ファイアをラインナップに追加した訳ですが、結果はどうだったのか。それはもう男子は大人気のオクトパス、女子はミッキーマウスやポパイだったようです。本作は割と多くの人がシルバーシリーズで持っていましたから、同じゲームを新たに買おうとは思わなかったんでしょうね。
 見た感じシルバー版のファイアとそっくりですし、ミスマークも天使ですし、かなり共通してますね。面白いのが、炎が背景として赤く印刷された代わりに、煙がモクモク液晶で動くようになりました。うーん、前作の方が危険な火事っぽい。


ワイド版ファイアは高騰気味

 本作は前述の通り、あまり売れなかったようです。しかし、名作には変わりないため、ワイド版の需要も多くなっています。中古市場においても高騰し、本体のみでも8千円程度する状況が続いています。割に美品が多いので、思い切って買ってみるのもいいと思います。私も高値で思い切って買いましたが、結局お気に入りのシルバー版しかやっていません。
 そうそう、どこかのサイトに「ワイド版ファイアには青色緑色の2色ある」との記載があるそうです。
 このワイド版ファイア、なぜかとても変色しやすく、青緑色に変色した本体もよく見かけるんです。そういった本体を分解してみると、表面は青緑色に変色した本体も、裏側はしっかり青色していることが多いです。
 ということは、緑色のファイアがあるというのは変色したものを緑色のファイアだと見間違えた可能性が高いでしょうね。


本作以降ブームが低速

 本作発売後のクリスマス商戦以降、ゲームウオッチブームは一旦終息を迎えます。ゲームがマンネリ化したことや、オクトパス以降のヒットに恵まれなかったこと、他社の携帯ゲームのヒット(「モンスターパニック」や「パクパクマン」など)もあり、本作以降に発売された後期ワイドスクリーン3作の売り上げは不振に終わります。
 思えばこのファイアあたりから任天堂の模索が市場の評価とシンクロしなかったのでしょう。とはいえ、ファイアも含めこの冬の時代のワイド版は名作が多いです。次作以降も、名作たちを熱く解説させていただきたいと思います。

【第13作】 MC-25 ミッキーマウス

発売日 昭和56(1981)年10月9日
ワイドスクリーンシリーズ
本体色 レッド
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 3,500円
(中程度、本体のみ)

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☆ 今より下火だった?ミッキーマウス人気

 キャラクターライセンス作品第2弾は、ミッキーマウスです。ディズニーファンの皆様、お待たせしました。
 とはいえ、発売した昭和56(1981)年は少し現在と事情が異なるようです。そう、東京ディズニーランドが開園するのは本作発売から2年後の昭和58(1983)年。もちろん、当時からディズニー作品は知られていましたし、ミッキーマウスも人気がありました。
 でも、現在と比較すればどうだったでしょうか。当時はポパイやトム&ジェリースヌーピーなどと並んで海外アニメの1つというぐらいの位置づけだったかと思います。


☆ ライセンス作品だけに半ミス制導入

 久しぶりの明るい本体色にライオン以来の四つ目のボタンになりました。
 ゲーム内容は、4か所にいるニワトリがそれぞれ卵を産み落とすので、それをミッキーマウスが地面に落とさないようカゴに受け止めるというゲームです。
 ミッキーマウスという完全に子どもや女性をターゲットにした本作でも、半ミス制が導入されました。ただし、左上の窓からミニーが顔を出している間に卵を地面に落とした場合に限り半ミスです。ミニーが顔を出していない時にミスをした場合は1ミスとなります。
 卵は地面で割れて、半ミスの場合に限りヒヨコが産まれます。ヒヨコがヨチヨチ歩く映像がなかなかゲームウォッチらしいアイデアです。
 最高得点は999点、ミスクリアも200点・500点とこれまで通りになっています。


☆ 新しいターゲットは獲得したが…

 ゲーム内容自体はマンホールなどと変わらない感じはするのですが、旧来からのゲームウォッチファンには今ひとつ人気のない機種です。
 なぜなんでしょうね?私もディズニーランドは人並みに好きですし、ミッキーマウスに対してそこまで抵抗ないんですけど、このゲームだけはどうもあまり好きになれないんですよ。
 恐らく、真ん中に大きくミッキーを配し、ミッキーマウスをアピールしすぎた結果、卵を受け止めるというゲームの内容が小さくなりすぎてしまったからではないかと思うのです。
 ポパイも真ん中に主人公でしたが、そこまで大きく描かれませんでしたし、ゲーム内容を小さくはしていませんでした。
 本作では、卵はかなり小さく表現されているので、少しわかりにくい印象は否めません。
 新しいターゲットという点では、女性などを中心に受けは良かったと思うのですが、旧来のファンからの評価は厳しいものとなりました。


☆ とはいえやはりゲームウオッチ

 かなり酷評してしまいましたが、評価できる点もあります。1つは、前述の通り、半ミス時のヒヨコのアイデアが素晴らしいと思います。もう1つ、アラームキャラクターがミニーマウスです。窓から顔を覗かせてベルを鳴らすのがなかなか秀逸です。
 このゲームもキャラクターライセンス作品のため、他のゲーム機に復刻されていません。実物を手に入れなければゲームを楽しめないのですが、前述の通り、このゲームは売れた割に人気がありませんでした。飽きられるのも早かったからか、状態も良い中古品がかなりお手頃価格で手に入ります。ゲーム内容がそこまで悪い訳ではありませんので、初心者にもオススメです。


☆ 海外では違うゲーム名

 このミッキーマウス、海外ではライセンシーの関係からか「ミッキーマウス」というゲーム名では発売されませんでした。本体色もブルーで「EGG」(エッグ)というタイトルで発売されています。中のICチップはそのままに、液晶だけミッキー→オオカミ、ミニー→ニワトリ母ちゃんに置き換えられています。モデルナンバーも振られまして、EG-26です。
 EGGの本体を入手して、液晶をミッキーマウスのと取り替えたらどうなる?恐らく、青い本体のミッキーになると思います。
 実は、他の作品の外箱には、ミッキーマウスの本体が青色で印刷されたものもあるのです。もしかすると、当初の本体色は青色で準備していたのかもしれません。恐らくライセンシーの関係で本体色を赤で指定されたか何かで差し替えられたのだと思います。
 EGGの本体は国内で流通しなかったため、少々お高いかもしれませんが、液晶を差し替えて遊ぶのも面白いかもしれませんね。

【第12作】 FP-24 シェフ

発売日 昭和56(1981)年9月8日
ワイドスクリーンシリーズ
本体色 ワインレッド
発売価格 6,000円
2012年現在の中古品参考価格 6,000円
(中程度、本体のみ)

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アクロバティックな調理場

 これまでの危険シリーズはどこへやら、ポパイに続く平和シリーズです。
 といっても、この現場がまたすごい。「調理中にコックが自分を残してみんないなくなってしまいました。さあ料理を続けてください」という無理ありすぎる設定。食材を3種類(GAME Bでは4種類)フライパンで放り投げて、コックを左右動かしながら食材を受け止め続ける厳しい現場なのです。
 食材を床に落とせば、ナイフとフォークを手に持ち待機しているネズミに持っていかれてしまい、ミスになります。
 食材もただ放り投げているだけではありません。高さも色々変わりますし、一番左端にはネコがフォークを突き刺して食材を落とすタイミングをずらしてきます。これはパラシュートの時のヤシの枝に引っかかるのと同じパターンですね。


ネコにネズミに不衛生極まりない

 しかし、ネコやネズミが調理場にいるレストランっていかがなものかと。食品衛生上問題ありすぎです。ミスマークは喰ってやった感まるだしのネズミです。
 ネコは辛うじてカゴに入っていますが、突如身を乗り出してフォークを突き刺してきます。全くカゴの意味をなしていません。しかも突き刺しながらこいつもやったった感まるだしです。コックの慌てっぷり以上にこの2匹の表情がインパクトあります。
 キャラクターで際立つのがもう1つ。アラームキャラクターがアラームケトル、何とやかんです。昔、私の家にもありました。沸騰したらピーピー鳴るやかん。アレなんです。アイデアが秀逸すぎます。シリーズ随一のアラームキャラだと思います。
 設定は今回も突っ込みどころ満載ですが、細かい描写はさすがゲームウオッチです。


受け止め系ゲームの集大成

 本作までにゲームウオッチではいくつかの受け止め系ゲームが登場しました。ファイアに始まり、パラシュート、ポパイ。本作はこれらの集大成と言えるでしょう。
 フライパンで食材を跳ね返すアイデアはファイアから、ネコに時間差攻撃させるアイデアはパラシュートから。落ちる食材に時間差をつけるアイデアはパラシュートやポパイから。まさにこれまでのノウハウが結集された作品です。
 点数は1つ食材を跳ね返すごとに1点、最高得点は999点。ミスクリアも200点と500点で設けられています。


名作が続くワイドスクリーン

 ゲームウオッチの第2期黄金期を締めくくるシェフですが、個人的には苦手なゲームの1つです。あのネコの野郎に踊らされて、右端の骨付きチキンまで間に合わないんですよ。
 それまでの受け止めゲームが3列だったのに対し、GAME Bの4列はほんと過酷です。パニック度合はボールやバーミンの後半を上回るのではと思います。
 とはいえ、名作には違いなく、私も大切にしている機種です。


愛されて移植されまくり

 このシェフもすごいです。DSソフト「DSお料理ナビ」で料理の待ち時間にプレイできたりします。また、DSiウェアでも配信されています。実物も素晴らしいですが、DSでも同様にシェフの世界観を味わえます。
 ネコ野郎!マウスめ!と叫びながらプレイしてください。そういや次作もマウスだっけか、マウスめ!

※注 ニンテンドーDSiウェアを含むニンテンドーDSiショップは平成29(2017)年3月にサービスを終了しています。